2019年3月 プライベート・シェフ出張
いままでも気仙沼でセルビア料理を作ったことはあるけど、あのときは唐桑御殿『つなかん』に泊まり込みでお手伝いをしている間のことでした。今回は実質初めての泊りがけの出張へ。
きっかけは、ホームページ経由で「セルビア人のお客様をお迎えするにあたり、歓迎の意をこめたおもてなしをしたいので●●県まで出張願えますか」という趣旨のお問合せ。遠方のため冷凍便を先方で解凍調理いただくことも考えましたが、そもそもセルビア料理を見たことがない方にお送りしても、不親切なだけ。
初めての土地でしたが文面からとても大切な場であること、真摯なメールの対応もあり、旅費を負担いただけるのでしたら、ということでお引き受けしました。
急な依頼に不安もありましたが、ラキヤとアイヴァル、ヴェゲタがあれば何とかなるんじゃないかと、間違いのない範囲でできるメニューをお見積もり。
七つ道具をかついで行ってきました。
ご依頼主はセルビアへの旅行経験もお持ちで話が早く、セルビアンナイトのメニューブックとイェレナの料理本を元に当日メニューの微調整。
魚のスープを肉のスープに。野菜料理を一品増やし、会場の担当者と翌日の段取りを打合せ。
必要不可欠なスパイスなどは持参していましたが、それ以外の食材の仕入れにお付き合いいただき、翌日のランチの準備のめどがつきました。
あとは明日に備えて旅の疲れをとることに専念。早寝するに限ります。
会場は休業日の焼き肉店。
9時入りして、店舗のスタッフにもお手伝いいただき準備開始。
スープに使う肉は店のかたまり肉からメニューにあう部位を切り分けていただき、チェヴァピも遠赤外線の機器で焼くという、夢にもみたことがないような贅沢さ。
テーブルセッティングは、あえてお座敷席を、いつものように、でも、お箸を並べてセッティング。
日本人にも、セルビア人にも馴染みがありつつも、ちょっぴりエキゾチックな部分を残すように考えました。
◆メニュー:
・Rakija / セルビアの地酒(Kovilj Monastery 品種:プラム)
・Domaći Ajvar / 自家製パプリカペースト
・Šopska salata / ショープスカ・サラータ
・Pečene Paprike / Roast Paprika 焼きパプリカのマリネ
・Begova čorba/ 族長のスープ
・Cevapi / 皮なしソーセージ
・Pasulj prebranac sa kobasicama / ベイクドビーンズとソーセージ
・Vanilice / ジャムサンドクッキー
・Domaća kafa / トルココーヒー
・Rakija / セルビアの地酒(Kovilj Monastery 品種:プラム)
・Šopska salata / ショープスカ・サラータ
・Pečene Paprike / Roast Paprika 焼きパプリカのマリネ
・Begova čorba/ 族長のスープ
・Cevapi / 皮なしソーセージ
・Pasulj prebranac sa kobasicama / ベイクドビーンズとソーセージ
・Vanilice / ジャムサンドクッキー
・Domaća kafa / トルココーヒー
セルビアンナイトのお料理は正統派で、セルビアから来たお客様には珍しくも何ともないお料理のはずのため、日本に来てまでいつもと同じ料理?和食のほうがいいんじゃない?と、いささか不安でしたが、自国の伝統料理が出てくることにより、その背景や文化の紹介ができ、相互交流が生まれてコミュニケーションが深まるんですね。
しかも大皿料理を、みなで分かち合うスタイルは、日本の「同じ釜の飯を喰う」に通じるし。 はじめての街でも、初対面でも、料理に助けられたのは、お客様だけではなく、わたしが一番だったかもしれません。
ともに調理をし、ともに食卓を囲むことで人と人の結びつきが生まれる食の力を肌身で感じ、料理人冥利に尽きる出張でした。
関係者のみなさま、貴重な機会をいただきありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。