Serbian Night 番外編「バルカンのラキヤとワインでセルビア料理を楽しむ会」

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数か月前に、いつもお世話になっている方が、いただき物のセルビア産ラキヤと、ブルガリアワインをいつどこで開けようかと迷われていました。

 

愛用のソムリエ教本にセルビアブルガリアの記述はなく(10年以上前の版なので今は変わっているかもしれません)ワイン法の知識はありませんが、経験で美味しいことは知っています。「ぜひ、セルビアンナイトで!」と、立候補。快諾いただき「バルカンのラキヤとワインでセルビア料理を楽しむ会」の企画が立ち上がりました。

 

昨年出版された「ワインの世界地図-56カ国92地域のワイン産地の歴史と現在-」によると、セルビアはフランスのボルドー地方、ローヌ地方とほぼ同緯度に位置し、紀元200年頃にローマ皇帝プロブスによりシルミウム(現在のスレムスカ・ミトロヴィツァ)周辺に最初のブドウが植えられたと伝えられているそうです。

ブルガリアはイタリアのトスカーナ地方やスペインのリオハ地方と同緯度に位置し、紀元前3,000年からトラキア人によるワインづくりがはじまりました。

両国ともイスラム教の戒律によりオスマン帝国統治時代にワイン造りが衰退したものの、オスマン帝国からの自治、独立とともに復活したワイン産業は繁栄をむかえ、生産量は同書の世界ランキングでセルビアは15位、ブルガリアは22位を占めています。

  


もう一方の主役、ラキヤはバルカン地方で主に果実などからつくられる蒸留酒。日本では隣国のクロアチア産やモンテネグロブルガリア産の製品が輸入されていますが(フルーツブランデーに分類されていることもあるようです)、セルビア産はなかなか手に入りません。そのうえ、最上と言われる自家製を日本で手に入れるのは至難の業。 

今回はお客様がセルビアのグーチャ村の民宿で譲り受けられたものに加え、語学留学中の共通の友人から託されたニーシュの自家製ラキヤの2本が並びました。

なんて贅沢!

 

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会場はいつもの、渋谷駅から徒歩7分のコラボカフェ。青山通り沿い、イタリア専門旅行会社右隣の青山台ビル地下。急な階段を降りたつけ麺やさんの奥です。 

   

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メニューは以下のとおり

◆Rakija / Serbian Brandy

Vino / Wine

Bergulé Melnik & Pinot Noir 2015   Villa Melnik  Burgalia

Toplički Tribus Villa Prokupac   Toplički  Vinogradi Serbia

Pinot Grigio (Orange Wine) 2016   Primosic Collio Italia

Szamorodni Edes 2010   Tokaj Kereskedőház Zrt.  Hungary

HAKA Merlot Hawk's Bay  New Zealand

など

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Mezze / 前菜

Domaća Turšija / オリーブ、パプリカ、タマネギの自家製ピクルス

Pečene Paprike / ローストパプリカのマリネ

Begova Čorba / 族長のスープ

Sogan Dolma / 玉葱の肉詰め

Eliopsomo / 修道院のオリーブパン

Moskva Snit / モスクワケーキ

Domaća Kafa / トルココーヒー

 

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◆Rakija / Serbian Brandy

はるばるセルビア南部2つの街から届けられた自家製ラキヤは、竹で編まれた保存瓶に入れられています。 原料となる果実はプラムが代表的ですが、ブドウやリンゴ、マルメロなど多岐にわたり、ハーブや木の香りづけがされている場合もあるため、参加者一同が高いアルコール度数に気をつけながら(市販品のアルコール度数40-50度ですが、自家製は70度を超すことも)、原料を推察するのも楽しい時間。

 

民族衣装の男性が描かれた右のボトルは、お客様がグーチャ村の民宿で譲り受けられたもの。中央は、ニーシュに語学留学中の吉開裕子さんからこの会のために預かってきてくださったものです。

 

グーチャ村は、バルカン半島にあるセルビア共和国で行われる欧州最大のバルカンブラスの祭典「グーチャ・フェスティバル」の開催地であり、毎年8月のフェスティバル期間中は、人口2000人の小さな町グーチャに50万人が訪れ、バルカンブラスが響きわたることで有名です。絶対に行ったほうがいい!と何度も勧められているお祭りです。

 

詳しく知りたい方は2本目のラキヤを用意してくれた吉開裕子さんも出演しているこちら↓の映像をご覧ください。

グーチャのプリンセス、セルビアでも珍しい女性トランぺッター、ダニエラさんのドキュメンタリー(英語)です。

 


Daniela, Princess of Guca. The highs and lows of a Serbian trumpet band.

 

もっと知りたくなった方は、吉開さんのブログ↓や著作 「トランペットを吹き鳴らせ! セルビア&マケドニア ジプシー音楽修行記」もどうぞ!

domaca.raku-uru.jp

 

Vino / Wine

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Bergulé Melnik & Pinot Noir 2015   Villa Melnik  Burgalia

ギリシャとの国境近くの銘醸地メルニックで土着品種のメルニック(Broad-leaved Melnik Vine)と国際品種ピノ・ノワールブレンドでつくられたブルガリアの赤ワイン。

 

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このワインは、このブログを書くにあたりいろいろ調べてみましたが、ラベルのすべてがブルガリアキリル文字というハードルが高く断念。なめらかなタンニンと濃厚な果実みが印象的でした。

 

そのほかにも、セルビアの土着品種ワインをはじめ、ワールドカップの熱戦の余韻を感じさせるラベルにHAKAを描いたニュージーランドワインや、スロヴェニア国境近くの生産者の手がけるイタリアワイン、ハンガリーの甘口などなど、お客様が持ち寄られたワインについても語りが尽きませんが、長くなるのでこのへんで。

  

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Mezze / 前菜

Fetaチーズとハムの盛り合わせ

 

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Domaća Turšija / オリーブ、パプリカ、タマネギの自家製ピクルス

料理の食材とつなげたピクルスを自家製。

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Pečene Paprike / ローストパプリカのマリネ

「現地に住んでいた頃は好んで食べはしなかったけれど、今は懐かしく感じる 」という声も聞くペチェネパプリケは、はずせない味。

 

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Begova Čorba / 族長のスープ

ベグ(ベゴヴァ)は、「族長」を意味するオスマン帝国時代の地方行政官の称号であり、ふんだんに使われた肉が支配階級の贅沢を象徴しています。

バルカン地方でオクラは精力をつける食材として位置づけられており、乾燥したものを戻して使うそう。

肉汁もたっぷり出ますが、仕上げに加えるヨーグルトとレモンがそれを感じさせません。

 

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Sogan Dolma / 玉葱の肉詰め

ソガンドルマは、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの都市、モスタルの名物料理。丸ごと茹でて柔らかくしたタマネギをくり抜いて肉を詰め、蒸し焼きにします。

野菜の肉詰めに合挽肉を使い、パプリカで風味づけをすることの多いセルビアに比べ、牛肉寄り、トマト寄りにのレシピに土地による味の移り変わりを感じます。

 

現地に長く住まれていたお客様に、英語版のオリジナルレシピにあった「サワーミルク」に該当するものが日本にないため、クリームチーズをトッピングしましたが、その「サワーミルク」とは一体何でしょう?と、相談も。本来はカイマックやキセロモナコだろうけど、ケフィアヨーグルトでもいいのではないかと、アドバイスをいただきました( ..)φメモメモ。

 

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Eliopsomo / 修道院のオリーブパン

バルカンがテーマの今回は郷土料理の範囲も広くとり、パンはギリシャのアトス半島の修道院レシピより。 

ギリシャ北部のアトス山はエーゲ海に突き出した半島にそびえる東方正教会の聖地。女人禁制で修道士たちが自給自足の生活で祈りを捧げています。世俗的な生活を営む我々にとっては、オリーブとパプリカの風味がワインやラキヤとの相性がぴったりでした。

 

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(お客様撮影)Moskva Snit / モスクワケーキ

今回のメニューの秘かなテーマは旧ユーゴスラヴィア時代のノーベル賞作家イヴォ・アンドリッチ。幼少期をドリナ川に面したボスニアの都市ヴィシェグラードで過ごし、その町を舞台にした『ドリナの橋』を執筆しました。(日本語は絶版。英語版を読みかけなので内容の質問は深くはしないでください。。。。)

このケーキは、アンドリッチも通っていたというベオグラードの老舗名門ホテルのスペシャリテ、モスクワケーキの『イェレナと学ぶセルビア料理』版レシピです。

小麦粉の代わりにナッツを砕いたメレンゲのスポンジ層と、フルーツを挟んだカスタードクリームの重なりは、日本のどこにもありそうでなかった魅惑のハーモニー。

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(お客様撮影)Domaća Kafa / トルココーヒー

 〆はお約束のトルココーヒーで。

 

今回のBGM↓

 

ユーゴスラヴィアに生まれ「アドリア海の子」という意味の名前を持つヤドランカは、来日中の1991年にボスニア戦争が勃発し国が崩壊。パスポートが失効したため帰国がかなわず、日本の外務省からパスポート代わりの再入国許可証が発行されたのは1995年のことだったそうです。

およそ20年間にわたり母国語のほか日本語でも歌唱し、2011年の一時帰国先のクロアチアで病が発覚するまで日本を拠点に活動されていたそうです。

 

Hvala(フヴァーラ~ありがとう) ヤドランカ・ベスト

Hvala(フヴァーラ~ありがとう) ヤドランカ・ベスト

 

 

  すべてを包み込むような優しい深い声。

 

 

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 いつも気にかけてくださる皆さま、ご参加の皆さま、ありがとうございます。

今後ともよろしくお願いいたします。

みなさまにお会いできることを楽しみにしております。 

 

 

次回は11月26日開催のBalkanNightです。

残席わずかとなっておりますので、ご予定のお客様はお早めにお申し込みください。

  

serbian-night.com