2018年4月 神奈川県茅ケ崎市(齋藤牧場BBQ)
桜が満開の日曜日。神奈川県も少し駅から離れれば広がるのどかな田園風景。
新緑や川辺でのんびりと草を食む山羊を眺めながら茅ヶ崎市の牧場へ。
東京23区に牧場はなく、日本でもっとも都市部に位置するのは神奈川県内の牧場だそうです。
この看板が目印。週末は直売もしています。
目的地の齋藤牧場は湘南台駅からバスと徒歩で30分。
2年半ぶりの訪問です。
この日は 「ハチマルちゃんCSAバーベキュー」というイベント。
CSA(Community Supported Agriculture)は、日本語で「地域支援型農業」といい生産者と消費者が連携し、前払いによる農産物の契約を通じて相互に支え合う仕組みです。
2015年9月15日に秋田の佐藤さんの牧場で生まれた仔牛を齋藤さんが競り落とし、消費者である参加者と「ハチマルちゃん」と名づけをし、牧場でのBBQを重ねて交流を深めながら、30か月みんなで成長を見守ってきました。
写真左側、リーフレットの表面の台形の模様はハチマルちゃんの鼻紋。
人間の指紋と同様に一頭づつ模様が違い、個体の識別に使うそうです。
裏面は「産ませの親」佐藤拓史さんと、「育ての親」齋藤忠道さんのサイン。
913日育成し、2018年3月に出荷。等級はA5 BMS12 の505kg。
霜降りは現在の日本の中で最上級の結果となったそうです。
通常は美味しい赤身を追及し、黒毛和牛とホルスタインのF1交雑種を育てている齋藤さん。
A5ランクは8-12の5段階あるそうで、その最上の12番ランクを取得したのは4年ぶり2度目。3万頭に1頭の割合でしか出ない等級だそうです。
前回も佐藤さんの牧場で生まれた仔牛を育てた結果だということでした。
よい肉が生まれる条件は、血統、仔牛の目利き、育成の3拍子が揃ってこそなんですね。
奇しくも同じ2015年9月のセルビア旅行が人生の転機となったわたしは30か月間Facebookの投稿を陰ながら見守っているに留まり、この最終回が初参加。
直接出会えなかったハチマルちゃんの命をいただくこととなりました。
噛みきれずふだんは苦手なモツも、肉からの出汁の旨みでお替りしてしまった。
桜吹雪の下でBBQ。
おー!
滅多に拝めない霜降り具合。
オレイン酸の数値が高いと脂の融点が低く口どけがいいそう。
この脂の融点はきっと体温以下だから触っただけで溶けてしまいますよ、との言葉にそっとつついてみるとふんわり柔らか。
肉が焼けるのを待つ間に手作りゆるキャラも登場。
ここは日本?生産者の齋藤さん自らが切り分けた座布団サイズ。
こんな大きさと厚みのステーキは狩猟民族の国でしか見たことない。
しかも別のテーブルのチラ見くらいで。
焼きも齋藤さん直々。
超レアだったのでもう少し火を通しましょうということで
側面も焼きつけたものを切り分けていただき
本来使うべき人が使うべき目的で使っている牛刀の切れ味にちょっと見惚れる。
はじっこの少しカリっとしたところをゲット。
ええ、もちろん。
"No Ajvar No Life" ですから。
左のセルビア産唐辛子入りと、右のナス入りマケドニア産2種を持参。
みなさまにもお勧め。
どんどん焼けるお肉。
塩味だけ、アイヴァルを添えて、どっちも美味しい。
ハンバーグはパン粉と卵のみをつなぎにした挽き肉60gを渡されて、丸めるところから。
セルフサービスで焼いて
バンズに挟んで
デザイナーの末永さん手作りの旗を立てて
忘れちゃいけないアイヴァルをトッピング。
うー、いい日だ。
美味しい食事で初対面のひととも打ち解けて
CSAで前払金を積立ていた参加者に、返戻の肉が手渡されたのち
牛舎の見学へ。
徒歩30秒の直売所でBBQしていてもまったく臭気を感じなかった清潔な環境。
育成されているのは、黒毛和牛と、黒毛和牛とホルスタインの交雑種の雌牛。
小学生などの見学も受け入れているということで、子どもにも慣れてみんな穏やか。
見分け方を訪ねたところ、身体のどこかに白い点のあるのが交雑種だが、父系である黒毛和牛の”お父さん似”の子は生産者でも見分けずらいとのこと。
とはいえ、耳のピアスの番号をもとに「この子が生まれた牧場は○○で」と頭に入っていらっしゃるのですが。
自分が草食動物であるという危機感を忘れ、足を折ってくつろぐ牛さん。
逃げる必要ないものねー。。。。
前回の訪問記事
与える餌にも牛に対する深い愛情が込められています。
写真はビールの搾りかす。これと豆腐の搾りかすの”おから”を製造工場から安価で引き取ることができるのが都市部のメリットだそうです。肉に含まれる豊富なオレイン酸のヒミツにもなっているのではということでした。
そのほかにも茅ヶ崎ならではの、海底の腐葉土、貝殻、海藻など海のものを与えたら牛の健康状態が良くなったそうです。
納豆菌や砕けた米、トウモロコシなどとあわせてできた「牛さんごはん」。
人が食べても美味しいんじゃない?ということで、
過去にケークサレのレシピをつくるお仕事をいただきました。
アイヴァルだけじゃなく、このケークサレも焼いてくればよかったな。
次回はそうします。
牛舎の出入り口にはカラスよけのカラス。
美味しい「牛さんごはん」を狙って侵入が絶えないそうです。
「牛さんごはん」ケークサレのケータリング記事
赤身Love
家族にもお土産の肉を少々。
きょうは食べる側だったけれど。
やっぱりおもてなし側になりたいよね。
ここのお肉でバルカンBBQやれるようにならねばなー。
と思いながらの帰途でした。
追記:
若いころは、成長を見守ってきた命を食べるのは「かわいそう」と思っていた。
けれども、生産者がどんなに愛情をかけて大切に育んでも死産や病気などによる5%ほどの死は避けられないそうです。
「食」の現場に長く携わっていると、年ごとに、知るほどに「いただきます」の重みを感じます。
今は、きちんと食べるということはそのものの命を全うすることにつながるのだと信じます。出荷まで至らず失われてしまう5%の命のためにも。
齋藤牧場のみなさま、関係者の皆さま、ありがとうございました。