バルカン半島の歴史と養蜂に関する覚え書き

 

バルカン半島古代ギリシャ、ローマ文化の発祥の地であるとともに、現在ユーロに加盟していない国もあることから「最初で最後のヨーロッパ」ともいわれています。

蜂蜜は地域を象徴する食材のひとつ。穏やかな大陸性気候や豊かな植物群のおかげで、高品質の蜂蜜を生産するための環境が整っていると言われています。

セルビアでは9世紀にキリスト教に改宗後、19世紀まで養蜂は修道士(のちには教員も)が携わる仕事でした。1920年度以降は国家が養蜂を推進し、1962年の社会主義体制後、産業が飛躍的に発展しました。

 

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古代ギリシャでは蜂蜜は雲から到来すると考えられ、不死を約束してくれる神々の食べ

ものと考えられていたそうです。また、ローマ人は蜂蜜を「天国で生まれた空気の贈り物」と考え、神への捧げものとしました。ギリシャ語では蜂蜜をmelisと言い、古代ローマで話されていたラテン語のmelは蜂蜜にまつわる様々な語源となっています。メリッサという女性名も蜂蜜を意味する言葉から来ているそうです。

現在のセルビア共和国はかつてのローマ帝国の一部であり、帝国を再統一したコンスタンティヌス大帝、ミュシャの「スラヴ叙事詩」に描かれたステファン・ドゥシャンなど18名の皇帝を輩出しています。

 

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(写真はStroll Tipsよりニコライ堂 主聖堂のイコノスタス)

ローマ帝国を再統一しキリスト教を容認したコンスタンティヌス大帝は、皇太后ヘレナとともに列聖されています。ローマ帝国が東西に分かれたのち、教会も西のカトリック、東の正教会に分かれていきます。お茶の水ニコライ堂のセルギイ聖堂のイコノスタスには聖ヘレナが描かれています)

カトリック教会はミツバチと養蜂家の守護聖人として聖ヴァレンツィヌス(バレンタイン)を認定。4世紀にミラノ司教を務めた聖アンブロジウスも養蜂家、ミツバチ、ロウソク職人の守護聖人です。 

 

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セルビア 聖サバ寺院にて)

6世紀と9世紀の間、バルカン半島に定住したスラヴ人にとって主要な農業活動であった養蜂は、修道院や教会が普及に大きな役割を果たしました。バルカン半島正教会では、教会入り口付近にある台がふたつの台(高いほうは生きている人のため、低いほうは亡くなった方のため)にロウソクを捧げます。

キリスト教では主は人類を照らす「光」。祈りの場にはその象徴であるロウソの灯りが不可欠です。修道院ではロウソクの原料である蜜蝋を得るために養蜂を行い、

蜂蜜や蜜蝋は甘味料、添加物、自然療法の治療薬、防腐処理にも使われ、養蜂は非常に尊敬される職業となり、領主の館や地所には不可欠な技術とみなされ、中世には王族の中にも広がりました。 

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https://vojvodinaonline.comより

セルビア北部のヴォイヴォディナ州、スレムスキ・カルロヴァツィにある養蜂博物館には、教会型の養蜂箱も展示されているそうです。

   

セルビア コンチュール修道院にて)

現在でも衣食住にわたる生活のほとんどすべてを自給するため、人生の選択として、職業として、また教育を受けるために、修道院に入るという進路があるそうです。

2015年のセルビア旅行では、女子修道院で「アガペシロップ」というばらの花、シナモン、クローブ蜂蜜で風味づけした儀式用のワインのづくりを体験しました。

シスターはイコンのエキスパート、法衣のエキスパートなど、専門職としてそれぞれの役割を持ち、ワークショップの講師を務めたシスターは、オーガニックについて修道院で学んだそうです。

 

https://www.instagram.com/p/Ba3PYrkBiUR/

ミード(mead)は蜂蜜が発酵した酒で、おそらく人類最古のアルコール飲料と言われています。古来語のmeoduを語源とし、世界各地で飲まれています。バルカン半島でも古代から親しまれ、ワインの甘味料や香りづけとしても蜂蜜が広く使われました。 修道院では、ミサのためのワインとともにはちみつ酒(ミード)をつくり、収入を得る糧ともしました。

また、セルビアの代表的な地酒、フルーツブランデーのラキヤにも、はちみつを使用したものがあります。

一般に市販されているラキヤのアルコール度数は42°前後ですが、はちみつラキヤは24°ほど。何故かと疑問に思っていたところ、はちみつ酒(ミード)を醸造するのではなく、ラキヤに後からはちみつを加えるため、アルコール度数が薄まっているとうことでした。

 

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 (セルビア コンチュール修道院にて)

 蜜蝋で封印された瓶などもよく見うけられ、現在も生活のさまざまな場面で養蜂の産物が余すところなく利用していることを感じます (日本でも鮫や鯨に捨てるところなしと言いますが、それに似たものを感じます)。

 2012年現在は31,000人の養蜂家が年間約6、865トンの蜂蜜を生産しています。そのうちプロの養蜂家は266件で、94.7%が家庭内での事業です。

出典:REPUBLIC OF SERBIA MInistory of Agricalture, Forestory and Water Managemtent.

 

2015年に訪問したセルビアの農園でも放牧、養鶏のほかに養蜂を行い、蜂蜜のおすそわけをいただきました。その美味しかったこと!! 

 

セルビア ゴリア山の農園にて)

 

 ホモリェ山脈(Homolje)で生産されるホモリェはちみつは特に有名で、欧州連合EU)が定める原産地名称保護の対象にもなっています。カメノボ(Kamenovo)という村では毎年4月にバルカン地域から、何百人もの養蜂家を集める伝統的な2日間のフェアが行われ、小さな村ながら4千以上の蜜蜂の巣箱があるため、「蜂の巣村」として知られており、ほかにも各地ではちみつフェアは開催されているそうです。

 

また、1998-1999年のコソボ紛争が原因で国境地帯の農業が崩壊した際には、地雷の撤去作業が完了するまでの間、養蜂は酪農や耕作に比べ迅速な利益をもたらし、より安全な代役を果たしたということです。

引用元:Bee Keeping in the Balkans

 

 

クロアチア ロヴィニの市場の蜂蜜売り場にて) 

グリーンマーケットで野菜や果物、蜂蜜の瓶に群がっているのは蜂。屋外の食事でワインの甘い香りに誘われてくるのも蜂。のんびりゆっくりと飛ぶ姿に、ありとあらゆる場で出会います。喩えて言えば、血を吸い過ぎて重たくなり過ぎた蚊のような(笑)

いちいち怖がっていたら身が持たないうえ、バルカン半島に生息するカーニオラン種の蜂は大人しく、手で払いのけられるので親しみさえ覚えます。

 

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日本の養蜂の主流である、イタリア原産の「西洋ミツバチ」よりも大きく、黒い瞳と灰色の縞模様が印象的。現地ではカルニカと呼ばれ、スロヴェニア(旧ユーゴ)が原産ということです。日本でも女王蜂が輸入が可能だそうです。 

 

セルビア ホテルモスクワにて)

ホテルの朝食バイキングに蜂蜜があるのはお約束。

ティールームでお茶を頼むと気前のよいサイズの蜂蜜がついてきます。

 

クロアチア ドラツ市場の蜂蜜売り場)

現在蜂蜜はスーパーマーケットでも販売されていますが、人々は信頼できる養蜂家から直接を買う傾向があります。

トリュフの名産地イストラ半島では、トリュフで香りづけした蜂蜜もありました。 買わなかったことをいまでも後悔しているのは、ハニーヴィネガー。

さまざまな花から採集された蜂蜜、巣入りのコムハニー、花粉、プロポリス、薬効をうたったものなど、グリーンマーケットでは、さまざまな製品が売り場に並んでいました。

 

 

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こちらの小瓶はどちらも日本では珍しいボスニアヘルツェゴビナ産の森の甘露蜜。

手前がボスニア東部ロガティツァ地方、奥が北部のバニャルカ地方産で、2015年には、前年の洪水の反動でとてもいい蜜が取れたそうです。

どちらも濃厚でハーブやナッツのような香りもあり、そのまま舐めてもよし、料理にも使い易く、コーヒーにぴったりのよい蜜でした。 

 

日本在住のセルビア人からおすそわけでいただいたはちみつも美味しかった。ベオグラード近郊で養蜂をされている個人のお宅で採集されたものだそうです。蜜源の植物は不明ですが、華やかな香りとシャリシャリとした食感が病みつきに。

セルビアのひまわりの蜂蜜が美味しいんだよ、と、別の友人から教わったので、もしかしたらあれがそうかだったのかもしれません。 

 

 

 

追記:
もっと知りたくなった方へ

SPOS BEEKEEPING ASSOCIATION OF SERBIA(セルビア養蜂協会)

spos.info


現地からの情報が届く”Serbian Walker”の記事もご覧ください。

www.serbianwalker.com

 

 参考書籍:

ハチミツの歴史 (「食」の図書館)

ハチミツの歴史 (「食」の図書館)

 

 

 

serbian-night.com