2005年4月 桶仕込み保存会
特に関心のあるテーマなので2005年4月の投稿を再掲します。
きょうは桶仕込保存会(http://www.okeok.com/)による「いまさらおけを考える会」。
2年前にセーラ・マリ・カミングス氏の講演でこの会の活動を知ってから関心を持っていたので日経新聞の広告を見て参加を申し込みました。
長野県小布施町にある創業250年の造り酒屋、枡一市村酒造で98年に彼女が木桶仕込みの再開を提案したときに日本で木桶づくりをしている酒造メーカーは1件しかなく、その1件も御神酒として醸造している市販はされていないお酒だったそうです。
日本酒は事実上はステンレスやホウロウのタンクで0.1度まで温度管理をされた工業製品であったわけです。
(フランスでもワインづくりは同じような状況にあったそうですが、80年代に伝統に回帰する運動がおこり樽仕込みが復活したそうです)
そしていま直径1.5m以上ある大きな桶をつくれる職人は日本に5人しかいない事実!!(写真の紳士はその5人のうちの1人)
50石のタイプは初めから味噌や醤油を桶で仕込むものでそれらの用途で使う場合は100年以上もつそうです。
一方酒の仕込みに使う桶は30石のサイズで、酒の場合は水分を木が吸い込んで酒が減ることもあるので20~30年で新しいものに変える必要があり、漏れや雑菌の繁殖を防ぐためにメンテナンスも大変です。
けれども酒用には使えなくなった桶は醤油や味噌づくりの為にひきとられていくサイクルがあったそうです。
そして木に住み着いている酵母の働きで美味しい製品が出来るとか。
桶づくりの伝統を引き継ぐ為には、味噌や醤油ばかりでは職人の出番が少なく後継者不足の問題の解消にはならない。
たとえ手間がかかっても、まず酒屋が木桶仕込みを復活させることが必要、とのセーラ氏の理念に賛同して現在では30社あまりの酒造メーカーが木桶仕込みを復活させたそうです。
酒造は税務署の管轄なんですよね。桶が自然に水分を吸ってお酒が減ってしまうと納税額が減る為、税務署がステンレスやホウロウのタンクを推奨したということもあるようです。ワイナリーを見学した際にタンクひとつひとつに醸造量が書いてあるのが気になって質問してみたら、税務署がその台帳を保管しているんですってね。
当日は桶仕込みの日本酒を試飲しましたが、木の種類によってさまざまな個性が楽しめました。
さすがにヒノキのものはお風呂のイメージが強かったので不思議な印象でしたが。
桶仕込みがさらに増えると、ワインの樽とステンレス、ローストの強弱を比較するような楽しみ方ができそうな予感です。
各界の著名人が一枚一枚に思い思いに描いた桶の板をつなぎあわせた大桶。
赤いアルファベットの左は小泉総理のもの。
こちらの写真は木桶で仕込んだ食品たち。
私たちにもできることは、家で木桶をつかうこと。
小さな樽をつくる職人さんは100人ほどいらっしゃるそうですが、そちらさえとても少ない。
「日本人は産湯の桶から棺桶まで」桶とは切っても切れない関係と基調講演がありましたが、私も桶は大好き。
家でも温泉気分を味わおうとお風呂では木の椅子と桶を使っています。炊いたご飯を入れるお櫃も欲しいので、デパートで実演販売があるたびに購入を検討してはためらっていましたが、こんど見つけたら買っちゃおうかなぁ・・・